■ バンクーバーオリンピックの超大作はFairlightで始まりFairlightで終わる
世界中の約30億人の観衆と共に、オーストラリアの制作会社David Atkins Enterprises (DAE)は、バンクーバーオリンピックの開会式と閉会式を確かなものにするために総力を結集し、どちらも壮大で滞りなく執り行われました。

開会式では氷柱をイメージした小聖火台のうちの一本が上がらないという小さな不具合はありましたが、5万5000人収容のBCプレイス・スタジアムで2月12日と2月28日に行われた2つのショーは、大成功だったといえるでしょう。

舞台裏では、Fairlightテクノロジーは不可欠な役割を果たしました。既にARDとZDFによりドイツの観衆に提供された放送音を編集するのに用いられ、また現在、DAEの技術インフラの中心的な部分でもあります。



DAEは、2つのセレモニーで完璧な音声を届けるために、4台のFairlight Xynergiシステムに頼りました。この内2台はメイン再生として、残り2台はバックアップとして使われました。音声要件を取り扱うだけでなく、メインXynergiシステムはまた、 (ETCからの) ビデオ映像/フィルム映像/照明/オートメーション/レーザーやショー呼び出しを含む、他の全てのシステムのためにマスタータイムコードも提供しました。指揮者やパフォーマーさえも、Xynergiからのクリックとキュートラックを合図として受け取るためFairlightを頼りにしました。

FairlightのXynergi Media Production Centerは、Crystal Coreテクノロジー(CC-1)のプロセッシングパワーを利用し、統合したPyxisTrackビデオを取り入れて、一般的に用いられるWindowsアプリケーションと同様、エンジニアがFairlight CC-1の全ての特徴と機能にアクセスすることができるデスクトップユーザーインターフェースのXynergitコントローラーを特徴とします。Xynergiは非常に速いエディティングとミキシングインターフェースを提供し、広く使われているサラウンドフォーマットの全てを扱う能力があります。

DAEのSteve Logan氏(同僚のRob Stefanson氏と共にFairlightオペレーションを担当)は、次のように述べます。「これらの作品に必要とされる要求は、Xynergiによって提供された施設のほとんどあらゆる面で利用しましたが、最も重要なことはFairlightの伝統的な信頼性です。」

2つのショーは、Broadcast WaveとOMFファイルにてインポートされたメディアを使用してXynergi上で編集されました。またQuickTimeビデオは編集の間、リファレンスのためインポートされました。XynergiのユニークなクリップはEQをベースとし、レベルは広く多くのセグメントを伴ったマスターとバランスに使用されました。

「別々のシステムは、1つのXynergiが連続した音声プログラムを提供するループとA/Bロールシステムである間、もう1つのXynergiはメイン再生として構成されました。」と、Steve Logan氏は説明します。「これは、Fairlightだけができる非常に賢い編集と同期を使い、2つのシステム間の簡単な移行を考慮しました。」

マルチトラックステムは、複数のMADIストリームを通してフロントハウス、モニタリング、放送コンソールに供給されました。Xynergiも同時ステレオとサラウンドサブミックスを提供しました。どんな不可抗力にも対応できる様に、DEAはバックアップとして同一のミラーシステムを用意し、平行にシンクさせて動かしました。

Logan氏は説明します。「これは、フロントハウスとモニターコンソールを正確に複製しました。このアイデアは仮に停電でメインシステムが停止した場合でも、私達は間断なくバックアップに切り替えることができます。全ての4つのシステムは動作していましたが、バックアップシステムは別々のUPS電源で動いていました。」

バンクーバーショーはDEAにとって自然の作品を取り扱う初めての作品ではありませんでした。2000年のシドニーオリンピックや、ドーハで行われた2006年アジア競技大会での開会式/閉会式で得た経験を生かすことができました。バンクーバーへの予算は、3,000万ドルから4,000万ドルの間で、北京オリンピックの予算の約10分の1でした。また、北京とは違なり、バンクーバーセレモニーは屋内において開催されました。これはオリンピック史上初めての試みでした。